下肢静脈瘤は脚の静脈が膨らみ、表面に浮き出てくる病気です。
下肢静脈瘤とは血液の帰り道である静脈が、内部の血液が下肢に溜まることにより膨れ上がり、表面に浮き出てきた状態です。
良性の疾患で、ほとんどの場合生命に関わるようなものではなく、脚を切断するようなことにはなったりしませんのでご安心ください。
ただ、この病気の厄介なところが、進行性で自然に治ってしまうことがないところ。
放置すると、だんだん静脈の「こぶこぶ」が目立つようになり、だるさやむくみ、こむら返りなどの症状が強くなってきます。
重症化すると、皮膚炎、色素沈着、炎症などが起こり、ただれて皮膚潰瘍になったり、出血することも。
日頃から自分の体の状態をよく観察し、症状の有無を確認してみましょう。
ひどいむくみなど多くの方が起こる悩みレベルでも、まずはお気軽にお電話ください。
下肢静脈瘤は主に静脈の逆流防止弁の機能不全が引き起こす症状です。 この防止弁が機能不全を起こす原因は日常生活のさまざまなものが影響します。
原因として考えられるのは、妊娠出産、立ち仕事・デスクワーク、スポーツ、肥満、加齢など、いずれも脚の静脈が圧迫されるなど、静脈弁への負荷が中長期的に続くことが要因と考えられています。
特に妊娠中は脚全体により多くの負荷がかかるため、比較的女性に多い病気とされています。
下肢静脈瘤の症状は、ふくらはぎの重だるさ、疲れやすさ、むくみなどです。このような症状は、比較的誰でも起こることのある一般的な症状ですが、下肢静脈瘤が原因となっている場合もあります。
また、放置することで脚の循環障害から湿疹(静脈うっ滞性皮膚炎)、かゆみ、色素沈着が生じるリスクもございます。
少しでも気になる場合は、軽い症状の状態でもまずは気軽にご相談ください。早めの対処と継続したケアが大切です。
下肢静脈瘤は、大きく分けると「伏在型(ふくざいがた)・側枝型(そくしがた)・網目状・くもの巣状」の4種類に分類されます。これは浮き出た血管の太さで判断されます。
一般的に症状があり、レーザー治療や外科的な治療の適応になるのは伏在型の静脈瘤です。伏在型というのは、体の一番深いところを走る大きな静脈である、深部静脈に注ぎ込む、足の表面の血管、「大伏在静脈」、「小伏在静脈」という血管の機能不全によって起こります。
機能不全とは、静脈が重力によって逆流しないように、生まれた時から備わっている静脈弁が長年の立ち仕事、座り仕事、遺伝、妊娠や出産といったことを契機に壊れてしまい、本来心臓に戻っていくはずの血流が足先へと逆流してしまうことです。この状態が長く続いてしまうと、結果的に静脈が血液の量に耐えきれず、拡張してしまい、ボコボコと浮き出てくるのです。この伏在静脈への治療がレーザー治療や外科的治療になります。
他の3種類は「軽症静脈瘤」とされ、表面の血管自体の拡張であり、あまり心配のない静脈瘤になりますが、見た目が気になることも多いと思います。伏在静脈の機能不全がないこれらのタイプはレーザー治療などの適応にはなりませんが、少しでも増やさないように、弾性ストッキングをしっかり着用することをお勧めします。
下肢静脈瘤自体は命に関わるような重い疾患ではないですが、長期間放置することで皮膚にさまざまな合併症をきたす恐れがあります。
最初は血管が浮き出ていることに気づくだけですが、年数をかけて少しずつ進み、むくみや重だるさ、血管の痛み、冷えなどの症状が起きやすくなります。この頃には中等症になっており、さらに年数が経過すると、徐々に皮膚炎を起こすようになってきます。
皮膚炎が起きだすと重症化のサインです。かゆみが出たり、なんとなく毛の量が少なくなったり、あまり気にかからないような症状が出始め、最終的にはうっ滞性皮膚炎と呼ばれ、かゆみともに色素沈着が出たり、皮膚が硬くなってしまったりします。また、蜂窩織炎と呼ばれる皮下の感染が起きやすくなり、赤く腫れて痛むようになります。蜂窩織炎は治りにくく、繰り返し、最終的に皮膚潰瘍を起こすことがあります。
どんな疾患や病気もそうですが、早期発見・早期治療に越したことありません。「あの時行っておけば」「早めに相談しておけば」がないように、合併症などの症状が出る前に受診することをオススメします。
下肢静脈瘤血管内レーザー焼灼術(EVLA)は、伏在型の下肢静脈瘤の低侵襲治療(体に負担の小さな回復の早い治療)として、国際的に広く行われている下肢静脈瘤の標準治療です。
下肢静脈瘤レーザー治療は、痛んだ静脈内にレーザーファイバーを挿入し、レーザーの熱で静脈を焼灼し、瞬時に閉塞させる「血管内治療」です。焼灼した静脈は線維化という変化が起こり、1~2年かけて体内に吸収されて消滅します。
従来のストリッピング手術では、脚の付け根や膝裏に皮膚切開を加える必要がありましたが、それに対しレーザー治療は針を刺してレーザーファイバーを挿入し治療を行いますので、数ある治療法の中でも負担の少ない身体に優しい治療法です。
患者様の身体への負担を最優先し、当クリニックでは下肢静脈瘤のレーザー治療と同時に行う静脈瘤切除は行いません。
静脈瘤切除は下腿部に皮膚切開を行い、静脈瘤を引き出して切除する方法ですが、切開創が小さくとも必ず傷跡は残り、切開時の恐怖も多少伴ってきます。
ほとんどの場合、術後の経過とともに静脈瘤は退縮し、徐々に目立たなくなっていきますが、それでも残存する場合はレーザー治療に加えて、硬化療法を行う場合もございます。
当クリニックでは、静脈麻酔とTLA麻酔(低濃度大量局所麻酔法)の併用麻酔で、できるだけ痛みと不安のない治療を行っております。患者様の身体に負担を与える全身麻酔や腰椎麻酔は行いません。
治療後はすぐに歩くことができ、日帰りでの治療が可能です。ただし無理は禁物ですので、治療後にクリニック内に完備している療養室にてしばらく休んでいただき、その後ご帰宅いただきます。
当クリニックでの下肢静脈瘤の治療後には、静脈瘤は退縮してほとんど目立たなくなります。
治療法にもよりますが、患者様のご負担を考えて可能な限り皮膚切開を伴う治療は行いませんので、手術痕なども残りにくいです。
もしも残った静脈瘤が気になる場合には、硬化療法を追加することで、より静脈瘤が目立たないように治療を行います。
波長1470nmのレーザー光が静脈壁の水分に吸収され熱化します。
スリムファイバー(図下)は、径1.27mmと従来のもの(径1.85mm)より細く、低出力での焼灼が可能です。
TLA麻酔は、下肢静脈瘤日帰り治療に必要不可欠な麻酔です。このポンプを使用することにより、安全・確実に、そして効率よく麻酔液を注入することができます。