生活習慣病とは、「食習慣・運動習慣・休養・喫煙・飲酒等の生活習慣が、その発症や進行に関与する疾患」とされています。生活習慣と関連する病気としては、高血圧・脂質異常症・心筋梗塞・狭心症・高尿酸血症・糖尿病(成人型)・アルコール性肝疾患・がん・歯周病などがあり、多くは自覚症状のないまま進行していきます。
生活習慣病と言われる病気には以下のようなものがあります。
血液中に含まれる血糖値が慢性的に高くなる病気です。網膜症、腎症、神経障害といった三大合併症の他、動脈硬化が進行して脳卒中や心臓病のリスクも高くなります。
食生活の欧米化や運動不足によって体脂肪が過剰に蓄積された状態を指します。糖尿病や脂質異常症、高血圧、心疾患といった生活習慣病をはじめ、さまざまな病気につながりやすくなります。
中性脂肪やコレステロールなどの脂質代謝に異常をきたし、血液中の値が正常域をはずれた状態をいいます。動脈硬化の主要な危険因子であり、放置すれば脳梗塞や心筋梗塞などの動脈硬化性疾患をまねく原因となります。
食塩のとりすぎや肥満、飲酒、運動不足などが原因で、診察室での測定で最大血圧が140mmhg以上、または、最小血圧が90mmhg以上の場合を高血圧と診断します。高血圧症は、高血圧の状態が続き、動脈硬化が進むと、狭心症や心筋梗塞、心不全、脳梗塞や脳出血、認知症になりやすくなる病気を指します。
動脈硬化の進行により心臓の血管が狭窄してしまうものを狭心症と呼びます。
また、血管にできた動脈硬化のプラークが破裂することにより、血栓が生じて、血液が流れなくなり心筋の細胞が壊死したものを心筋梗塞と言います。
発症時には胸に激痛があり、呼吸困難や脈の乱れといった症状を伴うことがあり、突然死する場合もあります。
脳梗塞、一過性脳虚血、脳出血、くも膜下出血の総称を脳卒中といいます。
脳梗塞は脳の血管が詰まった状態です。さらに高血圧の程度が強いと、脳の血管が破れる脳出血、脳の血管に動脈瘤が発生・破裂してしまうのがくも膜下出血です。
特に、『喫煙』『飲酒』『肥満』『運動しない』『バランスの悪い食事』といった生活習慣は、がんを引き起こす重要な要因になります。
肺がんや食道がん、大腸がんなどの一部は生活習慣との関わりが強いものがあります。生活習慣を見直すことで発癌リスクが減ったという報告もあります。
COPD(慢性閉塞肺障害)は肺気腫や慢性気管支炎と呼ばれる肺の疾患の総称です。
たばこの煙に含まれる有害物質を長期間吸入したことによって、肺に炎症が起こり生じる病気です。
血中の酸素濃度が下がり、息切れや呼吸困難が強い場合は酸素吸入が必要になることもある怖い疾患です。
肝臓に脂肪がたまり、フォアグラのようになった状態を指します。今や日本人の3人に1人が脂肪肝といわれており、従来は軽い病気と考えられてきましたが、脂肪肝が肝硬変や肝臓がんへと進行する可能性があり、さまざまな生活習慣病のリスクも高めることがわかっています。
生活習慣病を引き起こす原因と分類は以下のようになります。
暴飲暴食などエネルギーの取りすぎで、肥満や糖尿病などの生活習慣病を引き起こします。またエネルギーの取り過ぎだけではなく、塩分の過剰摂取により高血圧や脳卒中、胃がんの原因となるほか、脂肪のとりすぎやビタミン・ミネラル・食物繊維の不足など、バランスの偏った食事でが原因で生活習慣病を引き起こします。
予防には、食品や栄養バランスを考え、食べ過ぎに注意する必要があります。
運動不足による生活習慣病は、肥満や高血圧、耐糖能異常、脂質異常などの発症リスクを増大させます。さらに、放置することで心筋梗塞や脳卒中など、命の危険がある疾患にもかかりやすくなり、脂肪リスクを増大させます。
予防には、1回20〜30分程度の運動を、週に4〜5日行うのが理想とされています。
喫煙はさまざまな生活習慣病と関連があることが明らかになっています。最もよく言われるのは肺がんですが、それ以外にもタバコの煙には60種類以上の発がん物質が含まれており、食道、胃、膵臓、肝臓など、さなざまな部位のがんを引き起こす原因になります。
さらに、循環器や呼吸器にも影響を及ぼすほか、糖尿病のリスクが高まるとも言われています。喫煙にメリットはありませんので、何よりも禁煙することが最善の予防です。
過度な飲酒はアルコール性肝障害や中性脂肪の増加、高血圧、糖尿病、狭心症や心筋梗塞などの心疾患、脳出血や脳梗塞などの脳血管疾患などの原因になります。また、空腹時に飲まず、食事と一緒にゆっくりと摂取したり、強いお酒は薄めて飲んだりすることで肝臓への負荷を軽減することができます。
お酒の適量は1日平均のアルコール摂取量が20g程度とし、週に1日以上はお酒を飲まない日を設けるのがおすすめです。
糖尿病の診断は、血糖値とHbA1c(ヘモグロビンA1c)を測る検査をし、高血糖が慢性的に続いているかどうかを確認します。健康な人の血糖値は、食前と食後を含め70〜140mg/dLという範囲になります。
・空腹時の血糖値が100~109mg/dL
「正常高値」となり、今後、糖尿病になってしまう可能性が考えられます。
・空腹時の血糖値が110~125mg/dL
「糖尿病予備軍」となります。糖負荷試験(75gOGTT)を含め、要精査が必要です。また、HbA1c(正常値4.6~6.2%)が測定されている場合は、糖尿病と診断できる場合もあります。
・空腹時の血糖値が126mg/dL以上、もしくは食後の血糖値が200mg/dL以上
糖尿病が非常に疑わしいことになります。この場合、同時に測定したHbA1c(1〜2カ月の血糖を反映する指標)が6.5%以上なら「糖尿病型」と診断されます。
糖尿病があっても、血糖をコントロールして、糖尿病がない人と同じ健康寿命(注)を保つことが、糖尿病の治療の目的です。治療法は主に3つありますが、血糖値をコントロールするには、まず食事、運動が大切です。
・食事療法
糖は食事によって体に取り込まれます。適切な食事によって、体に取り込まれる糖の量やエネルギーのバランスなどを調整するのが食事療法です。
糖質の多い食事(米類、麺類など、主食になる炭水化物)を減らし、たんぱく質(肉、魚、卵、大豆)や脂質を含めたバランスのよい食事を心がけましょう。また、おやつを食べるときは食間ではなく、食後のデザートにすると血糖値が上がる頻度が下がります。酒にも糖質が多いものがあり、日本酒、ワイン、ビールなどに多く、蒸留酒とされる焼酎やウィスキー、ジンなどには少ないですので、食事の楽しみ方を工夫してみてください。
・運動療法
運動によって、糖が使われます。また、筋肉の量が増えることで、糖をからだに取り込みやすくします。その上、脂肪が減ることで、血糖値を下げるインスリンが効果を発揮しやすい環境を作ります。
・薬物療法
糖尿病の薬にはいろいろな種類がありますが、主に飲み薬と注射薬があります。 飲み薬では、インスリンの分泌を良くするもの・効きを良くするもの、食事でとった糖の分解・吸収を遅らせるもの、糖の排泄を促すものがあります。注射には、インスリンの分泌を促す注射や、インスリンそのものを外から補う注射があります。
糖尿病と診断されたからといって、すぐにインスリンの注射が始まるわけではなく、状態に合わせた治療を行なっていきます。
血液中の脂質の濃度が基準の範囲にない状態が脂質異常症です。脂質異常症は以下によって診断されます。
・LDLコレステロール:140mg/dL以上
・トリグリセライド:空腹時150mg/dL以上、非空腹時175mg/dL以上
・Non-HDLコレステロール(総コレステロール-HDLコレステロール):170mg/dL以上
・HDLコレステロール40mg/dL未満
脂質異常症の治療は通常、食事療法と運動療法、薬物療法の3つがあります。
・食事療法
食事療法では、まず年齢・性別・身体活動量・肥満度・血糖コントロール・合併症などを考慮し、適切なエネルギー摂取量を決定し、その範囲内で食事を行うように心がけます。
また、血中のコレステロールを減らすことも必要です。血液中のコレステロールは「肝臓で作られるもの」と「小腸で食事から吸収されるもの」がありますが、高脂肪の食事が続いたり、コレステロールの多い食品を食べ過ぎると、小腸からの吸収が増え、血液中のコレステロールの値が上昇します。食品から摂るコレステロール量は1日200mg以下を目標にしましょう。コレステロールは、卵類、内臓類などに多く含まれますので、これらは食べる量と頻度を減らすよう注意しましょう。
・運動療法
有酸素運動を中心とした運動を行います。種目としては、ウォーキング(速歩き)、水泳、スロージョギング、サイクリングがおすすめです。1日あたり30分以上の運動を毎日続けることが望ましいです。(少なくとも週3日は実施)
・薬物療法
食事療法と運動療法を行っても脂質管理の目標値が達成できない場合、もしくは持っている危険因子が多く、動脈硬化や動脈硬化による疾患を起こすリスクが高い場合に開始されます。
最大血圧が140mmhg以上、または、最小血圧が90mmhg以上の場合を高血圧と診断します。
まずは1日2回(朝夕)に血圧を測定をしましょう。そして、常に高い状態なのか、変動があるのか、高い日が多いのであれば、どの時間帯で高いのかを確認します。すぐに内服治療が必要なこともありますが、食事療法、運動療法で下がる方が多いので、血圧測定をしながら経過をみていきます。突然血圧が上昇した場合、心臓など他の臓器に病気が隠れていたり、早朝高血圧がある場合、睡眠時無呼吸症候群が隠れていたりすることがありますので、必要に応じて検査を行います。
・食事療法
接種する塩分を1日6g未満にコントロールする必要があります。ヒントとして、「梅干1個」、「たくあん3切れ」などで、それぞれ約2gずつ塩分を接種することになります。
また、一日に摂取するエネルギー量を減らす(カロリーをとりすぎない、食べ過ぎない)ことと、アルコール飲料の1日接種量も減らしましょう。アルコールの適量は、日本酒は1合まで、ビールは中瓶1本まで、ウイスキーはダブルで1杯まで、ワインはワイングラス2杯弱まで、焼酎は半合弱までが目安です。
・運動療法
基本的に単発でどかっと運動するのではなく、ウォーキングを1回10分以上、1日合計40分以上など、長く続けられるものを取り入れてください。可能であれば、毎日30分以上を週に4~5日くらい継続しましょう。
・その他
喫煙やストレス過多も大きな負担になります。タバコはできれば禁煙し、1日の中でリラックスできる時間をうまく取り入れてみてください。
虚血性心疾患の診断は、標準12誘導心電図、ホルター(24時間)心電図やエルゴメーター等の運動負荷心電図に加えて、心臓エコー検査、血液生化学検査などの比較的低侵襲な検査により、冠状動脈のどの部位に狭窄や閉塞があるか、その重症度はどのくらいかを判定します。
さらに必要に応じて造影剤を用いた冠状動脈CT検査や冠状動脈カテーテル検査などが行われ、冠状動脈の狭窄や閉塞の程度を診断します。
心筋梗塞や狭心症などの疾患に対して、カテーテル治療や薬物治療等を中心として行います。
生活習慣病として大事なのは、原因となる虚血性心疾患を起こすリスクファクター(血糖値、脂質、血圧、肥満、喫煙など)をしっかりコントロールして、2回目を起こさないことです。1度血管の病気が起きてしまった場合、何も起きていない人と比較すると、2回目、3回目の発症が数倍起きやすいと言われていますので、いずれのリスクファクターもしっかりとした管理が必要になります。
基本的には、問診を経て呼吸機能検査、画像検査などで判断していきます。COPD患者さんは気道が狭くなり息が吐き出せないことが特徴ですので、医療機関でスパイロメータという器具を使って肺がうまく働いているかを調べます。
COPDの診断基準としては、気管支拡張薬投与後のスパイロメータを使用した呼吸機能検査で、1秒率が70%未満であることと、ぜん息や肺がんなど気流閉塞を起こしうる疾患を除外して診断します。
症状に応じて、薬物療法や運動療法などの総合的な治療(呼吸リハビリテーション)を継続的に実践します。
COPD が進行すると呼吸困難の症状により、運動能力や生活の質(QOL)が低下します。このような状態を改善するためには、薬物療法に加えて、運動療法や栄養療法、日常生活の管理などを総合的に行うことが重要とされ、このような包括的な治療のことを「呼吸リハビリテーション」といいます。
生活習慣病の予防には、生活習慣を整えることが一番大切です。生活習慣病に起因する心臓病を防ぐには、危険因子である高血圧、脂質異常症、喫煙、糖尿病や肥満を改善することが重要です。 それには禁煙、減塩、カロリー制限、バランスの良い食事や適度な運動などが重要となります。
食事は3食均等に、塩分、カロリー、栄養のバランスを考えて、ゆっくり食べましょう。腹8分目を心がけましょう。食後すぐ仕事をするなどの余裕のない生活は禁物です。間に休憩を入れましょう。寝る前3時間は食べないようにしましょう。
喫煙による生活習慣病の治療法は禁煙です。禁煙することでせきやたん、息切れの症状が軽くなるだけでなく、肺機能の低下もゆるやかになります。いきなり禁煙はハードルが高いという場合は喫煙数を減らすことで負担を軽減できます。
酒は百薬の長とも言いますが、飲み過ぎは体に毒。節度を持った飲酒を心がけることが重要です。目安としては、摂取量が1日につき男性で40g、女性で20グラム。強いお酒は薄めて飲み、週に1日以上は休肝日を設けるようにしましょう。
夜更かしせず十分睡眠をとってください。夜間よくトイレに立ったり、就寝中に息苦しくなったりするのは心不全の疑いがありますし、早朝の胸痛は不安定型狭心症(心筋梗塞になりやすい狭心症)の疑いがあります。主治医に相談しましょう。
過度な運動や負荷の大きい運動は症状が悪化する可能性があるため、無理は禁物ですが、適度な運動で心身をリフレッシュしましょう。メタボリックシンドロームや肥満解消にも効果を発揮します。
ストレスを溜めないように、趣味や旅行などを生活に取り入れながら適度にリラックスしたりしましょう。