睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に何度も呼吸が止まる病気です。10秒以上息が止まる『無呼吸』と呼吸が弱くなる『低呼吸』があり、平均して1時間に5回以上繰り返されると睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
睡眠中に何度も息が止まると眠りの質が悪くなり、夜中に何度も起きたり、日中の眠気やからだの怠さなどの症状を引き起こたりします。
また、血液中の酸素が不足することによって、血圧が上がる、血糖値が上がるなどの状態が起こり、生活習慣病を悪化させることが分かっており、さらに突然死、虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)、不整脈、脳血管障害(脳梗塞・脳出血)などの重篤な疾患に繋がったり、認知機能障害や認知症に影響を与える可能性がある怖い疾患です。
無呼吸の検査を行うと、1時間あたりの無呼吸、低呼吸の平均回数が分かります。平均無呼吸回数のことをAHI(Apnea Hypopnea Index)と呼び、AHIにより重症度が分類され、重症度によって、治療法が変わります。軽症はAHI 5-15、中等症はAHI 15-20、重症はAHI 30以上とされます。重症の場合、1時間あたり平均的に30回以上の呼吸停止があるということになります。
無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome、SAS)には、主に3つの主要なタイプがあります。それぞれのタイプには異なる原因と特徴があります。
寝ている時に息の通り道(上気道)が狭くなって発症します。
肥満(首の周りに脂肪が多い)やあごが小さい、扁桃が大きい、飲酒により舌や気道の周りがゆるむなどが原因となり、口やのどの組織が気道を塞ぐことで呼吸が停止します。
睡眠中のいびきや突然の目覚めなどの症状が見られます。
呼吸中枢が十分に働かず、脳からの呼吸信号が不適切なために起こります。
通常、のどの閉塞や空気の流れの障害はありません。むしろ、脳が呼吸の制御を失ったために起こります。
心不全や脳に異常がある脳卒中などの可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群と中枢性睡眠時無呼吸症候群が同時に存在する状態です。
気道の閉塞と中枢性の問題の両方が同時に生じている危険な疾患です。
無呼吸症候群は、普段の生活の中で感じやすいいびきや中途覚醒・日中の眠気・集中力の低下・イライラ・不眠から、生活習慣病(高血圧や糖尿病)・心臓病・脳卒中・認知症などの健康リスクを増加させることがある甘く見てはいけない疾患です。
適切な治療法を見つけるために、早めに専門医に相談することが重要です。当クリニックでも診察・処置が可能ですので、ご不安であればまずはご相談ください。
無呼吸症候群を疑う自覚症状は、寝ている途中で何度も目が覚める『中途覚醒』です。何度もトイレに行きたくなって起きるという場合も泌尿器科的な病気だけでなく、重症な無呼吸症候群が隠れている可能性があります。
睡眠時に起こる『いびき』や『呼吸の停止』は自覚症状がないため、家族など他の方からの指摘によって発覚するケースがほとんどです。少しでも気になる症状が出た場合は早めの受診が重要です。
無呼吸症候群は寝ている間の症状はもちろんですが、起きた時にもいくつか症状を感じるケースがあります。無呼吸により血中の酸素濃度が低下しているため、睡眠の質が悪くなり、何時間眠っても睡眠が浅くなり、熟睡感がありません。目覚めも悪くなり、だるさが出ることがあります。
また、目が覚めた時に頭痛や動悸、息切れ、胸が痛くなるといった症状が出ることもあります。寝ている間自覚症状がない分、起きた時の身体の様子を注意深く観察してみるのも早期発見・治療に繋がります。
夜間の無呼吸症候群の影響で、日中にもさまざまな症状が誘発されます。よく眠ったはずなのに、強い眠気が出たり、倦怠感が出たりします。
人にとって人生の2/3を占める睡眠は非常に重要な身体回復のフェーズ。無呼吸症候群によって起こる日中のデメリットは多数あるので、少しでも自覚症状があれば早めに受診しましょう。
無呼吸症候群を放置すると、さまざまな合併症を引き起こすリスクがあります。睡眠中に血圧が上昇し、持続的な高血圧を引き起こし、インスリン抵抗性の増加から糖尿病の発症を促進させてしまいます。
血液中の酸素濃度が頻回に低下してしまうため、心臓の負担を増加させ、突然死、虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)、不整脈(心房細動や期外収縮など)のリスクを増加させる可能性があります。
また、脳梗塞や一過性脳虚血発作の発症、認知機能障害や認知症発症にも影響を与えていると言われています。このような重篤な病気を引き起こす前に治療しておくのがオススメです。
睡眠時の無呼吸、低呼吸が平均的に5回以上(5回以内は正常)であれば、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。睡眠時無呼吸症候群が疑われる症状や病気がある場合に睡眠検査を行なって、1時間あたりの無呼吸、低呼吸の回数を調べます。
1時間あたりの無呼吸、低呼吸の平均回数のことをAHI(Apnea Hypopnea Index)と呼び、AHI 5〜15の場合は軽症と診断されます。
軽症の場合は横向き寝、減量、就寝前の禁酒指導を主に行います。寝返りをあまりしない場合は体が痛くならないように、クッションやマットレスを整え、横向きに寝ようと思っても、自然に体が戻ってしまうことが多い場合は横向き寝用の枕を使用するのもよいです。
また、太っている場合には減量により首周りの脂肪が取れるため、無呼吸が改善されやすくなります。就寝前の飲酒は首周囲の筋肉を緩めてしまい、無呼吸となりやすくなるため、寝る前には酔いが覚めている状態を心がけましょう。
睡眠時の無呼吸、低呼吸が平均的に5回以上(5回以内は正常)であれば、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。睡眠時無呼吸症候群が疑われる症状や病気がある場合に睡眠検査を行なって、1時間あたりの無呼吸、低呼吸の回数を調べます。
1時間あたりの無呼吸、低呼吸の平均回数のことをAHI(Apnea Hypopnea Index)と呼び、AHI15〜30の場合は中等症と診断されます。
軽症から中等症では、横向き寝、減量、就寝前の禁酒に加え、マウスピースを使用して気道の確保を行います。マウスピースは上の歯と下の歯をまっすぐ合わせるような形で作り、下顎が少し前に出たような状態になることで眠った時に気道を開いた状態にし、呼吸停止を防ぎます。
マウスピースは歯科で作成する必要がありますので、適応になる場合は作成可能な歯科にご紹介します。
睡眠時の無呼吸、低呼吸が平均的に5回以上(5回以内は正常)であれば、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。睡眠時無呼吸症候群が疑われる症状や病気がある場合に睡眠検査を行なって、1時間あたりの無呼吸、低呼吸の回数を調べます。
1時間あたりの無呼吸、低呼吸の平均回数のことをAHI(Apnea Hypopnea Index)と呼び、30以上の場合は中等症〜重症と診断されます。
中等症から重症の場合は、減量、就寝前の禁酒とともにCPAP(経鼻的持続用圧呼吸)療法というマスクでの治療を行います。CPAPは寝る時に鼻を覆うような形のマスクを装着し、呼吸が止まった時のを感知して、空気が送り込まれるような仕組みです。酸素の投与はありません。
寝る時に何かを着けて眠るということ自体に抵抗がある方は多くいらっしゃいます。ほとんどの場合は1−2ヶ月で慣れて、CPAP装着による睡眠の質の向上に喜ぶことが多いですが、なかなか慣れないということもあります。
CPAPのマスクはお渡しして終わりではなく、病院で無呼吸の状態やマスクの装着具合、装着時間などのデータを外来で一緒に見ながら気になる点があれば、マスクの形や機械の設定などを変えて様子をみていきます。慣れない場合もまずは装着して眠る、そのまま眠れなければ外すといったことを繰り返し、合わない部分を調整していくことでうまく続けることができるようになることが多いです。
重症な無呼吸がありそうな場合はCPAPのマスクが鬱陶しいというだけで放置せず、検査や治療を検討してみましょう。CPAP療法で使用する機器はそれぞれに購入する必要はなく、新しい機械を病院からお渡しする形になります。
無呼吸症候群の中でも、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、睡眠中の無呼吸によって全身の低酸素状態が続き、交感神経が優位になります。
また、気道がふさがれたり狭くなることにより、心臓や肺などの臓器がある胸腔内の圧が低下して、心臓に大きな負荷がかかります。そのため、心臓や血管などの病気を起こすリスクが高まり、心不全を起こしやすくなるのです。
無呼吸症候群と合併した心不全の治療は、通常の閉塞性無呼吸症に使用するCPAP療法を行うことも多いですが、ASV療法という、呼吸パターンに合わせた適切な圧力をかけて呼吸をサポートし、心臓の負荷を取る機械を使用した方がよいことがあります。
マスクや機械の形状はCPAP療法と同じです。ASV療法を行なって、心不全増悪を起こしにくくしたり、心不全による入院回数が減ることもありますので、適切な検査を行なって、治療を行なっていきます。
無呼吸症候群の大きな原因の一つは肥満です。毎日ウォーキングするなど適度な運動を心がけ、暴飲暴食はせず、栄養バランスのとれた食事を摂り規則正しい生活を送ることで、適正体重を維持していくことが重要です。
毎日ウォーキングするなど、適度な運動を心がけましょう。身体に大きな負荷のかかる激しい運動は必要ありません。何より大切なのは「継続」なので、自分のペースで生活の中に運動を取り入れましょう。
アルコールの摂取はのどの筋肉の緩みを促進し、無呼吸症候群のリスクを高めることがあります。できるだけ控えるか、適切な量に留めましょう。
喫煙は気道系に炎症をもたらして上気道の通気性に悪影響を及ぼします。喫煙者は非喫煙者に比べて睡眠時無呼吸症候群になるリスクが高いため、可能であればタバコを止めることが理想です。
仰向けで寝ると舌が喉を塞ぐリスクが高まるため、横向きで寝ることを心がけましょう。また、寝る前に大量の食事やアルコールの摂取を避けることも重要です。