朝はスッと履けた靴が夕方になると窮屈に感じる、ふくらはぎや足が膨張したように見えることはありませんか?むくみは医学的に浮腫(ふしゅ)といわれる症状で、血液中の水分が浸潤し、皮下組織にたまった状態を指します。中には自覚症状のない人もいますが、すねの骨のやや内側を親指で強く押し、圧痕がなかなか消えない場合はむくんでいると言えます。
むくみの原因は主に「筋ポンプ作用の不足」によるものです。むくみは、心臓や腎臓、甲状腺の病気、血液が逆流して滞る下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)などの代表的な症状です。
加えて、加齢や運動不足で足の筋力が低下し、血流が滞るのも大きな一因です。全身を巡った血液は、静脈を通って心臓に送り返されます。その際、足の血液は重力に逆らわなくてはならないので、伸び縮みする筋肉がポンプの役割を果たし、静脈弁が逆流を防ぎます。このポンプ機能が衰えると血液をうまく送り返せなくなり、血流の滞り=うっ滞を引き起こしてむくみが生じます。
心臓の働きが弱ると血管内に余分な水分が溜まってきます。その水分が血管の外にしみだしてむくみの原因となります。息切れなどの症状を伴うこともあります。
胸部レントゲンや心臓の超音波検査などで診断します。血液検査のBNPという検査も指標となり、利尿剤が有効なことが多いです。
腎臓の働きが低下して余分な水分や塩分を排泄できなくなることにより、心不全と同様に余分な水分が溜まってきます。また大量に尿タンパクが出ると血液中のタンパクが減ってしまい、これもむくみの原因となります。
何らかの原因で食事が十分にとれない場合、または腸や腎臓からタンパクがもれてしまう病気では血中のアルブミン値が低下します。膠質浸透圧が下がり血管の外に水分が漏れやすくなります。
薬の中にはその副作用でむくみが生じるものがあります。代表的なものは副腎皮質ステロイド、非ステロイド抗炎症剤、カルシウム拮抗剤(高血圧の薬)、ピオグリタゾン(高糖尿病薬)などです。薬を変更することによって症状が改善する場合があります。
腹水が溜まるような肝不全や甲状腺機能低下、副腎皮質ホルモンの異常症などの内分泌疾患、関節リウマチなどのアレルギー疾患などでも浮腫がみられる場合があります。
下肢静脈瘤について、詳しくはこちらをご覧ください。
足の静脈が血栓でつまってしまう病気で、片方の足全体が急に赤く腫れます。病気やけがで寝ている時や長時間乗り物に乗っている時などに起きやすいといわれています。血栓が足の静脈から飛んで肺の血管につまる肺塞栓症(一般にはエコノミー症候群とよばれています)の原因となる可能性があり、その場合命にかかわることもあります。
リンパの流れが悪く足が腫れる病気です。生まれつきリンパ管の発達が悪い1次性リンパ浮腫と手術や放射線治療によりおこる2次性リンパ浮腫があります。片方の足の場合が多いですが、両足のこともあります。次第に皮膚が固くなり象皮病といわれる状態になります。ストッキング着用やマッサージが治療の中心ですが手術が必要な場合もあります。
細菌が足に入ることにより炎症を起こし腫れた状態です。けがや巻き爪、水虫などから菌が入る場合もあります。赤く腫れ熱を持ち痛みを伴います。
湿疹や皮膚炎、虫刺され、しもやけなどの皮膚の疾患に伴い足が腫れる場合もあります。
むくみが常にある部分は、乾燥やかゆみを伴う「うっ滞性皮膚炎」になりやすく、細菌に感染すると腫れや変色を伴う「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」を発症します。いずれもむくみを長年放置した高齢者に多く見られ、悪化すると皮膚が硬くなったり、潰瘍になったりする危険性もあります。
足のむくみの予防・解消には、ふくらはぎの筋肉を収縮させる運動が有効です。仕事柄立ちっぱなしの人は、かかと上げ運動で筋肉を刺激。デスクワークが長い人は「貧乏ゆすり」も効果的です。一見お行儀が悪いと感じる動作ですが、実はふくらはぎの筋肉が伸び縮みする反応であり、むくみや冷えを改善します。
乾燥や感染予防のためにも、保湿は欠かさないこと。段階的な圧迫で血流をサポートする着圧ソックスや弾性ストッキングは、自分に合うサイズを選びましょう。むくみの悪化には内臓疾患が隠れている場合もあるので、自己判断せず受診することが大切です。
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